REACH規則における高懸念物質（SVHC） #13

2017年08月22日

掲載内容に関する最新の情報は、記事中に記載されている出典元や引用・参考資料にあたりご確認ください。

～第17次SVHC１物質を追加、5物質を更新、合計174物質に～

はじめに

ECHA（欧州化学品庁）は2017年7月7日付けで、Webサイトの「REACH規則における附属書XIV（Authorisation List：認可対象物質リスト）への収載候補物質Candidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation （高懸念物質の認可対象候補物質リスト）」を更新し、「パーフルオロヘキサンスルホン酸およびその塩（PFHxS）」の１物質を追加し174物質になりました。

パーフルオロヘキサンスルホン酸およびその塩（PFHxS）はパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル（PFAS）の群に属する化合物です。

4,4′-isopropylidenediphenol（和名：4,4’-イソプロピリデンジフェノール（ビスフェノールA；BPA））は既に第16次のSVHCとして確定していましたが、提案理由に第57条（f）内分泌かく乱性が追加されました。

さらにフタル酸エステル4種「ベンジルブチルフタレート（BBP）、ビス（2-エチルヘキシル）フタレート（DEHP）、ジブチルフタレート（DBP）およびジイソブチルフタレート（DIBP）」の提案理由にも第57条（f）内分泌かく乱性が追加されました。

また今回、制限物資として「PFOAおよび関連物質」が加えられました。

今回Candidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation（高懸念物質の認可対象候補物質リスト）に収載された物質解説
（1） ECHAによる“Perfluorohexane-1-sulphonic acid and its salts（PFHxS）”に関する判明している物質識別番号一覧（2）今回、すでにCandidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation （高懸念物質の認可対象候補物質リスト）収載物質や附属書XIVにリストされている認可対象物質について提案理由が追加されましたが、まず、SVHC候補リスト収載物質が認可対象物質に登録される手順について改めて手順を確認してみます。
ⅰ） ECHA（欧州化学物質庁）は、SVHC提案意図登録（Registry of Intentions）に公表された物質の中から技術文書（dosier）に記載された物質の用途、使用条件及び使用量等をもとに物質のリスク評価を行います。その結果リスクが高いと判断した物質の中からSVHC（認可対象候補物質）を公表し、パブコメ後に候補物質とするか否かの評価を行います。この評価結果は加盟国委員会（MSC）で審議され認可対象候補物質リスト（Candidate List）への追加が決まると、その物質はCandidate Listに収載されます。
ⅱ）認可対象候補物質リスト（Candidate List）に収載された後、収載物質はECHAによってリスクの高い物質から優先順位が付けられ「認可対象物質リスト」への収載案を欧州委員会に提出し、欧州委員会が最終決定し認可対象物質として附属書XIVに収載されます。

（3）今回すでに2017年12月1日付けで認可対象候補物質リスト（Candidate List）に収載されている4,4′-isopropylidenediphenol （bisphenol A; BPA）がなぜ再び候補物質としてテーブルに上がったのかについて解説します。REACH規則で定める「認可対象候補物質」及び「認可対象物質」としての選定基準は第57条に定められ以下の通りです。
第57条a） CLP規則に従い「発がん性」区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質
第57条b） CLP規則に従い「変異原性」区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質
第57条c） CLP規則に従い「生殖毒性」区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質
第57条d） REACH規則附属書XIIIの基準に従い「難分解性、生体蓄積性及び毒性」を有する物質
第57条e） REACH規則附属書XIIIの基準に従って「極めて難分解性で高い生体蓄積性」を有する物質
第57条f）内分泌かく乱性を有するか、難分解性、生体蓄積性及び毒性を有するか、または極めて難分解性で高い生体蓄積性を有するような物質であって、（d）又は（e）の基準を満たさないが、（a）から（e）に列記した他の物質と同等レベルの懸念を生じさせるような人または環境に対する深刻な影響をもたらす恐れがあるとの科学的証拠があり、かつ第59条に定める手続きに従って個別に特定される物質

以上の条件に当てはまる物質はREACH規則第59条によって定められた手順に従い「認可対象候補物質」として認可対象候補物質リスト（Candidate List）に収載されます。

前回、4,4′-isopropylidenediphenol （bisphenol A; BPA）が認可対象候補物質リスト（Candidate List）に収載された理由は第57条c）の生殖毒性でしたが、今回収載が検討された理由は第57条f）の内分泌かく乱物質としての理由を追加するか否かを論じたもので、極めて特殊な例であったと思われますが、この理由は却下されました。

まとめ

今回、Candidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation（高懸念物質の認可対象候補物質リスト）に収載された物質はパーフルオロヘキサンスルホン酸及びその塩（PFHxS：かなりの種類があります）1物質のみですが、すでに認可対象候補物質にリスト化されている4,4’-イソプロピリデンジフェノール（ビスフェノールA；BPA）や認可対象物質として附属書XIVにリスト化されているフタル酸エステル４物質の提案理由に第57条（f）内分泌かく乱性が追加されました。この辺の状況を明確にするため、今回は高懸念物質（SVHC）が認可対象候補物質としてリスト化され、認可対象物質として附属書XIVに収載されるまでの流れを再確認しました。

また、今回制限物質としてペルフルオロオクタン酸（PFOA）, その塩類およびPFOA関連物質が追加されました。

引用・参考資料

・Candidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation　（ECHA、2017年）
・欧州の化学品規則（REACH/CLP）に関する解説書　（経済産業省、2013年1月9日）
・ここが知りたいREACH規則　（J-Net21）
・COMMISSION REGULATION （EU） 2017/1000 amending Annex XVII to Regulation （EC） No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council concerning the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals （REACH） as regards perfluorooctanoic acid （PFOA）, its salts and PFOA-related substances　（EU官報、2017年6月13日）

注意

・無断で本情報を二次使用すること及び転載することを禁じます。
・本情報は不確実な情報が含まれる可能性がありますので、本情報を利用される場合は参考文献及び引用先の情報も合わせてご覧のうえ、自己の責任において判断をお願いします。
・英文による引用・参考資料部分においては、英語の専門家でない筆者が仮和訳していますので、本情報を重要な場面で利用される場合は、引用先の原文を参考に自己責任にて判断願います。